
スイコーのサステナ経営は、女性がカギ
仙台の一級建築士事務所スイコーは、震災のボランティアから社会貢献に目覚め、住まいづくりを通したサステナブル経営を実践しています。
一級建築士事務所の株式会社スイコーの澤口司社長とは、「仙台防災未来フォーラム」で講演していただいたり、先日の「サステナ経営実践カンファレンス」でもプレゼンしていただいたりと、なにかとご縁があります。
個人的な話で恐縮ですが、わが家の住宅耐震診断を仙台市に依頼したところ、スイコーの二級建築士である千葉哲也さんが来て、細部の状況までしっかりと診断していただいて、安心したこともあります。
その後、「仙台防災未来フォーラム」のSDGsとうほくのセミナーでは千葉さんに登壇いただいた経緯もあり、社を挙げて本気でサステナブルな方向で事業を展開されているのを知っているで、今回、取材させていただきました。
|「仙台まち美化サポーター活動」で地域をきれいに。
澤口社長がまず話されたのは「仙台まち美化サポーター活動」のこと。もう約25年ほど地道なゴミ拾いの活動をしているという。
スタートから10年ぐらいでマンネリ化になってきたので、社長自らネジを巻き直し、社員も自主的に参加するようになり、ゴミ拾いするエリアも徐々に広がっていった。
半径1㎞ぐらいを掃除し、仙台市が奨励している「仙台まち美化サポーター活動」の認定も受けて、このCSR活動は定着していった。
秋には落葉が多いので、エリアを分けて収集したり、冬には雪かきをしたり、地域に根ざす企業として当たり前のように掃除しているという。
ある日、近所の幼稚園の職員の方から感謝の果物をいただき、毎年、感謝のお礼をいただいているという。
街をきれいにするという効果だけではなく、朝には登校する小学生たちが「おはようございます!」とあいさつするようになり、子どもたちが安心して暮らせる防犯の役割もしぜんに生まれて、町内会や仙台市から何度も表彰を受けている。
|下請けからの脱却。一級建築事務所へ。
創業40周年の中で、水道局から表彰を受け、リフォームデザインコンテストでは18年も受賞し、リフォーム瑕疵保険という責任をしっかり取る実績も宮城県内No.1となっている。
この受賞歴からも戸建の新築、リノベーションの実績のほどがうかがえるが、ここに至る道のりは簡単ではなかったようだ。
初代社長であるお父さんの時代は配管工事が中心で、大手ハウスメーカーの下請けが事業の中心だった。川上で施主様と接する機会はなく、何かトラブルが発生したときだけメーカーから呼ばれて、謝る役を担わされていたという。
釈然としない気持ちとともに、メーカーからの発注価格の切り下げもあり、一念発起。リフォーム事業を中心とした業態へ転換し、脱下請けの方向へと舵を切った。
その後に澤口さんは猛勉強をして一級建築士の資格を取り、さらに宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士など、資格マニアといわれるほど建築関連の一通りの資格を取得しているという。
|社会貢献の意識の原点は、神戸の震災のボランティアから。
神戸の震災の時には、配管工事の専門家としてすぐに現地入りし、ボランティアで工事をしたという。
その経験があったので、東日本大震災の時には社内も大きな被害を受けながらも、会社のことは後回しにして、まずは近所の家屋の屋根にブルーシートを掛けたり、寝るスペースを確保したりと、身近なところからボランティアを続けていた。
そんな矢先、せんだい・みやぎNPOセンターの紅邑代表理事(現・SDGsとうほく代表理事)からの依頼で、石巻にWFP(国連世界食糧計画)のためのテントを設営してほしいという依頼が舞い込んだ。
現地に行くと、かなりの大型テント!とても自分たちだけでは対処できない。
本来ならゼネコンがやるべき仕事だが…困ってしまった。
そこで、建築業界の仲間たちに呼びかけると同時に、SNSを通じた人々にも協力を呼び掛けて、ボランティアが全国から集まり、次々と設営することができた。
|女性の設計士や営業パーソンが活躍。
建築業界は男性社会といえるが、スイコーでは女性の設計士や営業スタッフが多く活躍している。
それは施主である旦那さんだけがすべてを決定するわけではなく、奥さんの意見も強く反映されるので、自然にそうなったようだ。
奥さんは男性の営業マンには話しづらいことでも、女性のスタッフになら話しやすい。安心感も生まれる。その辺の細やかなフォローも大切になってくるので、男女のチームで活動しているという。
だからこそ、女性のスタッフには産休・育休の期間を考慮して、長期の休暇を取っても、できるだけスムーズに復帰できるような環境を整えている。ここまで親身に考えている社長は少ないのではないだろうか?
|女性が働きやすい職場になれば、男性も働きやすくなる。
スイコーでは令和2年の時点でSDGsの目標を設定。6つのゴールを抽出し、さらにターゲットを自社に合わせた独自のものを打ち出しています。ここまで具体的に明快なターゲットを設定している企業も珍しいでしょう。
達成できているものと、できていないものがあるので、創業50周年をめざして新たに見直していくということです。
この中でもっとも重要なアピールしたいことは?と澤口社長に尋ねると、
「女性が働きやすい職場になれば、男性も働きやすくなる、という点でしょうか。」という言葉が返ってきました。
住まいという生涯の価値を高めて、長く続く幸せな家づくりを目指したい。
その理念には、女性スタッフは欠かせない存在であり、パートナーである、という強い想いが表れているように感じました。
会社で提供したいのは…
社員にとっては安心して働ける職場環境を、
施主様にとっては安心して住み続けられる住環境を。
澤口さんの誠実さからにじみ出る、信用を第一としたサステナブルな経営理念が静かに熱く伝わってきました。
執筆:高橋 好郎(たかはし よしろう)
サーキュン編集長・クリエイティブディレクター

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